目標もなく、余剰資金をひたすら投資信託を買うという投資ポリシーだと、ゴールなくジョギングするのと同じで、いつか息切れしてしまいます。
その目標・ゴールを定めるための指標として「4%ルール」というのがありますので、それをご紹介します。
目次
- インデックス投資の出口戦略「4%ルール」とは?
- 「引退時の資産×4%」の定額取り崩しとは
- 「引退時の資産×4%」定額取り崩しの具体例
- 「毎年の資産残高×4%」の定率取り崩しとは
- 「毎年の資産残高×4%」定率取り崩しの具体例
インデックス投資の出口戦略「4%ルール」とは?
1998年、アメリカのトリニティ大学で発表された資産運用に関する研究から導かれたルールです。
4%ルールとは、毎年 資産運用額の約4%を生活費として切り崩していけば、30年以上が経過しても資産がなくなる可能性は非常に低いという内容です。4%という数字はアメリカの平均的な株価成長率である7%から物価の上昇率である3%を差し引いて計算されています。
保有する株式や時代によって株価成長率は変わってきますし、住んでいる国によって物価上昇率が変わるため、4%という数字が変わることがあり得ますので、誰にでもこのルールが当てはまるわけではありません。
この範囲内で生活を続ければ半永久的に資産が目減りすることはない、という考え方だということです。
具体的には・・・
例えば、生活費が月20万円(年240万円)必要だとすると、4%の運用益で年240万円を生むためには元本が6,000万円必要です。
つまり、6,000万円を資産運用すれば、4%の運用益で生活費を生むことができ、元本の6,000万円が減らない状態を作ることができます。
計算がしやすいので上記の例ですが、よく考えると、死ぬ時に6,000万円を残したまま死ぬことになります。働き損とも言えますし、そこまで貯めなくても良かったんだ、となりますよね。
4%ルールには、「引退時の資産×4%」の定額取り崩しと「毎年の資産残高×4%」の定率取り崩しの2種類があります。次は、資産の取り崩し方法についてご紹介します。
「引退時の資産×4%」の定額取り崩しとは
「引退時の資産×4%」の定額取り崩しとは、引退時資産×4%に相当する金額を定額で取り崩していく手法です。
運用しながら4%の定額で取り崩していくと資産が残り、残った金融資産で運用を続けていくとさらに資産が増えるという研究結果も出ています。
定額取り崩しのメリット
定額取り崩しのメリットは、常に定額を取り崩すために結果がわかりやすいことです。金額が決まっているので、いくら取り崩せば良いか計算する手間が省くことができます。
定額取り崩しのデメリットは、基準価額が下がっている状態が続くと、資産の寿命を短くし、当初に予定していた期間よりも早く尽きてしまう可能性が出てきます。
定額取り崩しの場合、資産をより長く維持することは難しいケースもあるといえるでしょう。
「引退時の資産×4%」定額取り崩しの具体例
引退時の資産を6,000万円と仮定して、その4%を定額で取り崩していくと、こんな感じ。(※残資産で資産運用していない想定です。)
- 1年目に取り崩す金額240万円(残額5,760万円)
- 2年目に取り崩す金額240万円(残額5,520万円)
- 3年目に取り崩す金額240万円(残額5,280万円)
- 4年目に取り崩す金額240万円(残額5,040万円)
- 5年目に取り崩す金額240万円(残額4,800万円)
- 6年目に取り崩す金額240万円(残額4,560万円)
- 7年目に取り崩す金額240万円(残額4,320万円)
- 8年目に取り崩す金額240万円(残額4,080万円)
- 9年目に取り崩す金額240万円(残額3,840万円)
- 10年目に取り崩す金額240万円(残額3,600万円)
- 11年目に取り崩す金額240万円(残額3,360万円)
- 12年目に取り崩す金額240万円(残額3,120万円)
- 13年目に取り崩す金額240万円(残額2,880万円)
- 14年目に取り崩す金額240万円(残額2,640万円)
- 15年目に取り崩す金額240万円(残額2,400万円)
- 16年目に取り崩す金額240万円(残額2,160万円)
- 17年目に取り崩す金額240万円(残額1,920万円)
- 18年目に取り崩す金額240万円(残額1,680万円)
- 19年目に取り崩す金額240万円(残額1,440万円)
- 20年目に取り崩す金額240万円(残額1,200万円)
- 21年目に取り崩す金額240万円(残額960万円)
- 22年目に取り崩す金額240万円(残額720万円)
- 23年目に取り崩す金額240万円(残額480万円)
- 24年目に取り崩す金額240万円(残額240万円)
- 25年目に取り崩す金額240万円(残額0万円)
当然、25年で資産は尽きてしまう計算になりますが、シンプルにするために残資産額で運用をしていない前提となっています。
実際には、残っている資産で運用を続けていますので、理論上は25年よりは長く資産は残りますし、年単位で取り崩すのではなく、月単位で取り崩す方が運用できる資産が多くなりますのでさらに長く資産を残すことができます。
4%ルール2:「毎年の資産残高×4%」の定率取り崩し
インデックス投資の出口戦略としてご紹介したもうひとつの4%ルール「引退時の資産×4%」の定額取り崩しについて解説します。
「毎年の資産残高×4%」の定率取り崩しとは
「毎年の資産残高×4%」の定率取り崩しとは、毎年の資産残高×4%に相当する金額を定率で取り崩していく出口戦略の手法です。
金融資産のポートフォリオが株式100%の場合、平均的なリターン(期待収益率)が約7%、債権が100%の場合、平均的なリターンが約4%、株式50%と債権50%の場合平均的なリターンが約5.5%といわれています。
そこで、株式50%と債権50%のポートフォリオの平均的なリターンにインフレ率を年約1.5%と想定して、実質的なリターンを4%と計算します。毎年4%ずつ資産が増えていくと考えていくわけです。
定率取り崩しのメリットは、定額取り崩しのデメリットである資産の基準価格が安い時に多く売却してしまうというリスクを回避できる点です。定額切り崩しと比較して資産の寿命をより延ばして長く維持することができる可能性が高くなります。
一方、定率取り崩しのデメリットは、資産の残高が減ると取り崩せる換金額が減少することです。年を追うごとに、受け取れる金額は少なくなっていきます。また、定額取り崩しと異なり、毎年決まった額を使うことはできません。
資産残高に左右されるため、換金額が安定しないこともデメリットと考えられます。基準価格が高く資産を多めに取り崩すことができた時に使い切らず、基準価格が低い時に備えておくなどの対策が必要です。
「毎年の資産残高×4%」定率取り崩しの具体例
毎年の資産残高×4%に相当する金額を定率で取り崩していくケースをシミュレーションしてみましょう。もともと資産残高6,000万円あったとして、
- 1年目に取り崩す金額240万円(残額5,760万円)
- 2年目に取り崩す金額230万円(残額5,530万円)
- 3年目に取り崩す金額221万円(残額5,308万円)
- 4年目に取り崩す金額212万円(残額5,096万円)
- 5年目に取り崩す金額204万円(残額4,892万円)
- 6年目に取り崩す金額196万円(残額4,697万円)
- 7年目に取り崩す金額188万円(残額4,509万円)
- 8年目に取り崩す金額180万円(残額4,328万円)
- 9年目に取り崩す金額173万円(残額4,155万円)
- 10年目に取り崩す金額166万円(残額3,989万円)
- 11年目に取り崩す金額160万円(残額3,829万円)
- 12年目に取り崩す金額153万円(残額3,676万円)
- 13年目に取り崩す金額147万円(残額3,529万円)
- 14年目に取り崩す金額141万円(残額3,388万円)
- 15年目に取り崩す金額136万円(残額3,253万円)
- 16年目に取り崩す金額130万円(残額3,122万円)
- 17年目に取り崩す金額125万円(残額2,998万円)
- 18年目に取り崩す金額120万円(残額2,878万円)
- 19年目に取り崩す金額115万円(残額2,763万円)
- 20年目に取り崩す金額111万円(残額2,652万円)
- 21年目に取り崩す金額106万円(残額2,546万円)
- 22年目に取り崩す金額102万円(残額2,444万円)
- 23年目に取り崩す金額98万円(残額2,346万円)
- 24年目に取り崩す金額94万円(残額2,252万円)
- 25年目に取り崩す金額90万円(残額2,162万円)
こちらも、シンプルにするために残資産額で運用をしていない前提となっています。
このように、「毎年の資産残高×4%」の定率取り崩しは資産残高に左右される点を覚えておきましょう。
上記の2つの例ですが本来は、残資産額は基準価額に依存して変動しますし、残資産で資産運用されますが、シンプルにするためにそれらは計算に入れていません。
簡単ではありますが、残資産額を定率で取り崩すパターンと、定額で取り崩すパターンを、シミュレーションするExcelファイルを共有します。こちらは、運用益を何%に想定するかを加味することができますので、試してみてください。ご要望あればアップデートしますのでコメントください。